葛飾区史

第2章 葛飾の成り立ち(古代~近世)


第3節 近世の葛飾

■葛飾と水③葛西用水とふたつの溜井 :北関東の二大用水

 北関東の用水には、利根川を取水源とする葛西用水と見沼代用水がある。見沼代用水は大宮台地から中川低地西部、葛西用水は中川低地部の用水であるが、成立の経緯は大きく異なる。
 後発の見沼代用水は、江戸幕府の新田開発の一環として、享保13(1728)年に葛西用水上流の下中条(埼玉県羽生市)を取水口として開設された。見沼代用水は、交差する河川の底をくぐらせる伏越と上をまたぐ懸樋注釈1で送水し、取水と排水を分けた効率的な用水で、約半年で完成した。
 一方、中川・東京低地の用水は、はじめは元荒川の瓦曽根溜井以南の初期葛西井堀、江戸川を取水口とする中島用水、利根川の本川俣(埼玉県加須市)から取水した幸手用水で、別々の用水であった。葛西用水の特色は、川の蛇行部を利用して水をためる溜井にある。溜井は、上流部から琵琶溜井、松伏溜井、瓦曽根溜井、小合溜井(近世前期は亀有溜井)があった。

近世葛西用水体系図
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注釈1:伏越は用水が水路などを横断する時に河川の川底より下に水路をくぐらせるもの、懸樋はまたぐもの。