葛飾区史

第4章 現代へのあゆみ(戦後~平成)


第2節 現在の葛飾

■葛飾の産業と観光 :地域コミュニティの核を担う商店街の取り組み

 葛飾区の商業は、家族など少人数で経営する小売店が店舗数の8割を占め、駅周辺を中心に商店街を形成して発展し、地域住民の日常生活を支えてきた。また、これらの商店街は、地域住民の憩い・交流・娯楽の場や情報集積・発信の場である他、防犯・防災対策や文化の継承・発信やまちなみの保全など多様な役割を果たし、地域コミュニティの核としての役割も担ってきた。
 しかし、平成3(1991)年のバブル経済崩壊後の長引く景気低迷による買い控え、規制緩和による大型店の進出注釈1-1、コンビニエンスストアやインターネットを使った通信販売の増加、共働き家族の増加などによる生活様式の変化は、小売店に大きな打撃を与えた。この結果、売り上げの低迷や高齢化・後継者不足による廃業が増加し、商店街に空き店舗が目立つようになった。このため、遠くまで買い物に行くことが困難な高齢者などの買い物の場や地域コミュニティの核となる場が失われる恐れが出てきた。
 このような状況を踏まえ、商店街は工夫を凝らし、独自のキャラクターを作成したり、イベントやセールを実施するほか、商店街連合会注釈1-2が中心となり、先進商店街の視察や商店が競い合う商店コンクールを開催している。平成26(2014)年度には商店街の活性化を目的に、商店200店舗を紹介したクーポン付きの『ぶら街ガイドブック』を作成した。
 さらに葛飾区も商店街に対する各種支援を行い、商店街連合会や加盟商店街と協働して、様々な商店街振興策を展開してきた。
 商店街の環境整備推進を目的として、平成4(1992)年に、アーケードや自転車置き場、街路灯などの整備に対する助成を開始し、歩行者や買い物客の快適性・利便性の向上を図った。また、平成18(2006)年には、防犯カメラの設置助成を開始し、平成24(2012)年には、防火・防災の安全体制強化のため、商店街連合会が消防署と連携協定を締結するなど、地域住民の暮らしの向上と安全を守る取り組みも進めてきた。
 さらに、商店街のにぎわいの創出を図るイベントに対しても支援を行っている。「立石フェスタ」や「両さんまつり」など各商店街で工夫を凝らして実施しているイベントへの助成を平成15(2003)年に開始し、平成21(2009)年には、区内地域の活性化や地域コミュニティ機能の向上などを目的に、自治町会や学校などの地域団体と連携して行うイベントへの助成を開始し、「立石安心フェア」や「東日本大震災復興支援チャリティー」などが行われた。
 平成26(2014)年には、商店街への「リ・ビジット(再訪問)」をコンセプトとした区最大規模のグルメイベント「かつしかフードフェスタ」を開催し、7万人を超える来場者があった。
 このような取り組みの結果、平成27(2015)年現在、98の個性的で人情味あふれる商店街が地域コミュニティの核を担っている。

葛飾区内の商業集積地区と集積地区別事業所数(平成 19〔2007〕年)

主に「都市計画法」第8条に定める「用途地域」のうち、商業地及び近隣商業地域であって、商店街を形成している地域をいう。おおむね1つの商店街を一つの商業集積地区とする。1つの商店街とは、小売店、飲食店およびサービス業を営む事業所が近接して30店舗以上あるものをいう。また、「1つの商店街」の定義に該当するショッピングセンターや、多事業所ビル(駅ビル、寄合百貨店など)は、原則として1つの商業集積地区とする。
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葛飾区内の小売業商店数と販売額、従業員数(平成3〔1991〕〜19〔2007〕年)
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立石仲見世商店街
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第1回かつしかフードフェスタ(新小岩公園)

平成26〔2014〕年11月22日〜11月23日まで開催。
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注釈1-1:昭和48(1973)年に制定された小売業の事業活動の調整を目的とする旧「大店法」が平成3(1991)年に改正され、出店調整が必要となる店舗面積、休業日数、閉店時間の緩和が行われた。さらに、平成10(1998)年に、この法律は廃止され、大型店設置者の適正な配慮の確保を目的とした「大規模小売店舗立地法」が制定された。
注釈1-2:昭和26(1951)年11月26日に葛飾区内の商店を経営する有志にて結成。平成26(2014)年度現在は、区内53の商店街が加盟している。