葛飾区史

第4章 現代へのあゆみ(戦後~平成)


第2節 現在の葛飾

■葛飾の産業と観光 :観光資源を点から面へ 地域経済活性化への観光施策

 江戸庶民の間で、日帰り可能な参詣地や行楽地として親しまれてきた柴又は、昭和44(1969)年から全48作が制作された映画『男はつらいよ』のヒットにより、江戸川流域の豊かな自然、門前町の風景や人々の人情などを求めて、全国各地から観光客が訪れるまちへと発展してきた。
 柴又帝釈天参道の各店舗は、古いものを大切にするだけでなく、軒下照明を統一したり、大正から昭和の風情を残しながら店構えを修復するなど、古き良きまちなみを残し再現することで参道の魅力を高めようと一丸となって取り組んでいる。この結果、平成21(2009)年には、「グッドデザイン賞」注釈1-1、平成22(2010)年には国土交通省の「美しいまちなみ賞」注釈2を受賞した。
 また、柴又には、大正時代末期から昭和時代初期にかけて建てられた和洋折衷の建築が特徴の山本亭などの多くの観光名所があり、このような柴又のまちをより多くの方に知ってもらうため、「寅さんまつり」や夕暮れ時に盆灯籠で参道を灯して「寅さん」を偲ぶ「寅さんの夕べ」、「宵まつり」などのイベントを実施している。また、柴又河川敷では、間近で見ることのできる「葛飾納涼花火大会」を一般社団法人葛飾区観光協会や各種団体と協働して開催し、区にゆかりのある花火を打ち上げるなど、葛飾らしい花火大会として、多くの観光客が訪れている。
 花菖蒲で有名な堀切菖蒲園は、江戸時代からの観光名所であった「堀切園」の一部が母体となっている。堀切菖蒲園では、区の花である花菖蒲の見ごろの6月に葛飾菖蒲まつり注釈1-2を開催し、特設ステージでの演奏などを行ったり、多くの出店が並び花菖蒲がライトアップされるなど、工夫をこらしている。
 また、地域と協働して、知名度の高い漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の「両さん」、『キャプテン翼』の大空翼を活用し、平成18(2006)年より順次「両さん」を始めとした『こち亀』のキャラクター銅像15体と、大空翼を始めとした『キャプテン翼』のキャラクター銅像8体を建立して、亀有、四つ木、立石地域に新たな観光地を創出した。
 さらに、こうした葛飾区内各地の観光資源を巡ることができる観光ガイドマップの制作や期間限定の路線バスの運行など、葛飾区を訪れる観光客の回遊性を高める取り組みが行われている。
 また、政府による訪日プロモーション(ビジット・ジャパン)の取り組みに合わせ、外国人観光客向けに英語や中国語などの外国語版のパンフレットを作成する他、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での外国人観光客のさらなる増加を見据え、無線LANの導入などの取り組みを始めている。
 このような一般社団法人葛飾区観光協会や各種団体、地域住民と協働した取り組みで、まちのにぎわいを創出し地域経済を活性化させるため、幅広い観光施策を積極的に推進している。

柴又帝釈天参道
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山本亭(平成16〔2004〕年)
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葛飾納涼花火大会(江戸川河川敷)(平成28〔2016〕年)
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堀切菖蒲園(平成28〔2016〕年)
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葛飾菖蒲まつりでライトアップされた堀切菖蒲園(平成26〔2014〕年)
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外国語版の観光パンフレット
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注釈1-1:良いデザインを顕彰することを通じて、くらし、産業、社会全体を、より豊かなものへ導くことを目的とした総合的なデザインの推奨制度のこと。財団法人日本産業デザイン振興会(現公益財団法人日本デザイン振興会)が主催している。
注釈2:美しいまちなみをつくり、育てるために、行政と民間が協力し、ハードとソフトを含めた総合的な取り組みが行われている地区を全国から募集し、その中でも特に優れた地区について表彰を行う制度のこと。平成23年度からは、都市景観大賞「都市空間部門」および「景観教育・普及啓発部門」に変更。
注釈1-2:堀切菖蒲園と水元公園の2カ所にて開催されており、堀切菖蒲園は、約200種・6000株、水元公園は、約100種・14000株の花菖蒲が見られる。