葛飾区史

第3章 近代化への道(明治~戦前)


第1節 南葛飾郡の時代

■葛飾と水④ 河川と産業 :長板中形

 長板中形は浴衣染めの代名詞的な染め技法で、綿布に型紙で防染糊を置いて藍染めにより柄を染めていく。「長板」と呼ばれるように防染糊を置いていくための板は約6.7mある。江戸の粋な浴衣を染める技法で東京の下町で盛んに行われていたが、昭和に入ると郊外に広がるようになり、葛飾区、埼玉県三郷市や八潮市などに業者が広がった。
 清水幸太郎(明治30〔1897〕~昭和63〔1988〕年)は、この長板中形の職人で、明治30(1897)年に東京市本所区(現墨田区)で生まれた。小学校卒業後父の下で長板中形の修業を始めた。昭和3(1928)年、南葛飾郡本田町字四ツ木(現四つ木)に移り住み、以後昭和63(1988)年に没するまで葛飾区で長板中形を生業とした。昭和29(1954)年に第1回日本伝統工芸展に出品し、以後第15回までほぼ毎回出展を続けた。昭和 30(1955)年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されている。

清水幸太郎 染 竹垣に菊
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清水幸太郎

長板中形の型付け。木綿地の表裏両面に模様を合わせる。
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中川で防染糊を落とす(昭和30年代)
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