葛飾区史

第5章 暮らしの移り変わり


第2節 低地で暮らす

■水への畏れ :蛇の伝説

 小菅町には洪水から村を守った小菅殿と呼ばれる大蛇の伝説が残っている。『新編武蔵風土記稿』に「塚上に槐の古木あり、古へこの木の窟に大蛇住せしを小菅殿と称せし由、今もこの塚を小菅殿と唱ふ」とある。この小菅殿に関して、伝わっている話は次のような内容である。
 小菅殿という大蛇が小菅に住みついていた。最初は村人から気味悪がられていたが、次第に仲良くなり、人気者になっていった。あるとき小菅に大水が出て村人は避難したが、逃げ遅れた人が出てしまった。小菅殿は自分の体を橋のようにして、1人、また1人と村人を洪水から避難させていたが、最後に力尽きて洪水の中に消えてしまった。水が引くと小菅殿のうろこが残されていた。村人は村を救った小菅殿をしのんでそのうろこをいつまでも祠にお祀りした。