葛飾区史

第5章 暮らしの移り変わり


第2節 低地で暮らす

■蓮根とミトラズ :ミトラズの栽培

 葛飾区の特産物の1つであるしめ飾りの材料は、ミトラズと呼ばれるわらが用いられる。ミトラズとは、「稲の実を採らない」という意味で、青々としたわらの色を出すために、まだ稲穂が出ない7月下旬から8月にかけての暑い時期に刈り取りをした。刈り取ったわらは真夏の日差しの中で乾燥させる。稲の品種としては黒穂や東山など、丈が長くしめ飾りが作りやすいものが使われた。
 このミトラズは湿田に作られることが多かった。これは湿田が富栄養化していて丈の長い稲を作りやすかったからである。稲が株わかれをして茎の数が増えやすい品種でもあるので、植える際には株と株の間を広く空けておく。
 また蓮根の田んぼの縁にミトラズを植えることも多かった。このときはコサウエといって稲を直播し、密集させて栽培した。密集させることにより、柔らかい稲が育つので輪飾りなど小さな種類のしめ飾りを作るのに適したわらがとれた。また、蓮根の水田はもともと丈を伸ばす成分が多い下肥が大量に投下されているので丈の長い稲を育てやすかった。

ミトラズの水田(昭和62〔1987〕年、埼玉県吉川市)

左側の水田は右側の稲と比べると青い色が強いことがわかる。都市化が進んだのちは葛飾区内の生産者は近隣の農村に水田を求めてミトラズの栽培をしていた。
戻る時は右上の×をクリックしてください

ミトラズの稲刈り(昭和43〔1968〕年、砂原町〔現西亀有〕)
戻る時は右上の×をクリックしてください

ミトラズの乾燥1(昭和43〔1968〕年、砂原町〔現西亀有〕)

夏の暑い陽ざしの下で乾燥させ青々とした色を出す。
戻る時は右上の×をクリックしてください

ミトラズの乾燥2 (昭和43〔1968〕年、砂原町〔現西亀有〕)

屋敷地だけでなく、道路まで競争で占拠してミトラズの干し場を確保した。
戻る時は右上の×をクリックしてください