葛飾区史

第2章 葛飾の成り立ち(古代~近世)


第3節 近世の葛飾

■葛飾の名所と行楽地 :半田稲荷

 半田稲荷は、『新編武蔵風土記稿』では和銅4(711)年、社伝では12世紀初期の創立と伝えられる古社で、享保年間(1716 〜1735)には、はしかや疱瘡(天然痘)・安産に霊験があるといわれた。江戸の町では、願人坊主という宗教者が疱瘡やはしかを防ぐ色とされた赤色の装束で、手に半田稲荷の幟や赤い鈴を持ち「葛西金町半田の稲荷、疱瘡も軽いな麻疹も軽いな、運授安産御守護の神よ」と謡い踊りながら、お札や災いが去るおまじないのくくり猿注釈1を売り歩いた。文化10(1813)年には中村座注釈2の狂言で坂東三津五郎が半田稲荷の願人坊主に扮して大人気となり、浮世絵にも描かれた。

けいせい半田稲荷 業ひら 歌川国丸
戻る時は右上の×をクリックしてください




注釈1:四角い布に綿を縫い込み、四隅を足として1カ所に集めてくくり、頭を付けて猿の形に作ったもの。
注釈2:歌舞伎の劇場で江戸三座の1つ。