○葛飾区手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例

平成31年3月28日

条例第2号

全ての区民が、社会、経済、文化その他のあらゆる分野における活動に参加し、心豊かに生活していくためには、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)の有無によって分け隔てられることなく、豊かなコミュニケーションが図られることが重要である。

手話は、ろう者のコミュニケーションにとって必要不可欠なものであるが、かつては手話が言語として認識されず、手話を使うことができる環境が十分に整備されてこなかった歴史がある。

こうした中、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)において、「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう、と定義された。

また、障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることが求められている。

しかしながら、現状では、障害のある人にとって、障害の特性に応じた情報の取得及びコミュニケーションのための手段を選択することができる環境は十分に整えられておらず、地域社会において、日常的に不便又は不安を感じながら生活している人も少なくない。

ここに私たちは、手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用しやすい環境を整備することにより、障害のある人の社会参加を促進し、全ての区民が、障害の有無にかかわらず、相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、音声言語のみならず手話その他の形態の非音声言語も言語であるとの認識に基づき、手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段についての基本理念を定め、葛飾区(以下「区」という。)の責務並びに区民及び事業者の役割を明らかにするとともに、普及及び利用の促進に関する施策の基本的事項を定めることにより、障害のある人が手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用しやすい生活環境を構築し、もって障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障害のある人 障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(3) 手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段 手話、音訳、要約筆記、筆談、字幕、点字、触手話、指点字、平易な表現、絵図、記号、身振り、手振り、重度障害者用意思伝達装置、パーソナルコンピュータ等の情報機器その他の障害のある人が情報を取得し、及びコミュニケーションを行う際に必要な手段として利用されるものをいう。

(4) コミュニケーション支援者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者、盲ろう者通訳・介助員その他障害のある人への伝達の補助等の支援を行う者をいう。

(5) 合理的な配慮 個々の場面において、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の表明があった場合に、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう実施する必要かつ合理的な取組であって、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。

(基本理念)

第3条 障害の特性に応じた情報の受渡し及びコミュニケーションのための手段を選択することができる環境を十分に整えていくことは、障害のある人が日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要不可欠であるとの理解の下、全ての人が相互に人格及び個性を尊重し合うことを基本として行わなければならない。

2 手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用する全ての人が有するコミュニケーションを円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならない。

3 手話の普及は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が心豊かな日常生活及び社会生活を営むために大切に受け継がれてきた言語であるとの認識の下、行わなければならない。

(区の責務)

第4条 区は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、障害のある人が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう、手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の普及及び利用の促進に関する施策を推進するものとする。

(区民の役割)

第5条 区民は、基本理念に対する理解を深め、手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の普及及び利用の促進に関して、区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の普及及び利用の促進に関して、区が推進する施策に協力するよう努めるとともに、障害のある人が手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用するための合理的な配慮をするよう努めるものとする。

(施策の基本方針等)

第7条 区は、第4条に定める責務を果たすため、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段に対する理解を促進し、普及及び啓発を図るための施策

(2) 障害の特性に応じた情報の受渡し及びコミュニケーションのための手段を選択し、及び利用しやすい環境を整備するための施策

(3) コミュニケーション支援者を養成し、及び確保するための施策

(4) 区内で行われる手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段に対する理解を促進するための活動に対する支援に関する施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

2 区は、前項の施策の推進に当たっては、障害のある人、コミュニケーション支援者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するものとする。

(委任)

第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。

この条例は、平成31年4月1日から施行する。

葛飾区手話及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例

平成31年3月28日 条例第2号

(平成31年4月1日施行)

体系情報
第10編 生/第2章 社会福祉
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平成31年3月28日 条例第2号