○葛飾区消費生活条例

平成19年12月17日

条例第38号

目次

第1章 総則(第1条―第10条)

第2章 消費者への支援(第11条―第14条)

第3章 消費者被害の防止(第15条・第16条)

第4章 消費者被害の救済(第17条―第26条)

第5章 葛飾区消費生活対策審議会(第27条)

第6章 雑則(第28条)

付則

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、基本理念を定め、葛飾区(以下「区」という。)及び事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにするとともに、区が実施する施策について必要な事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者施策」という。)の推進を図り、もって区民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 区民 区内に在住し、在勤し、又は在学する者及び区内において事業活動又は社会的活動を行うものをいう。

(2) 消費者 区民のうち、事業者が供給する商品又はサービスを使用し、又は利用して生活し、又は活動を行うものをいう。

(3) 事業者 商業、工業、サービス業その他の事業を行うものをいう。

(4) 商品 消費者が消費生活を営む上において使用する物をいう。

(5) サービス 消費者が消費生活を営む上において使用し、又は利用するもののうち、商品以外のものをいう。

(6) 消費者団体 消費者の保護又は消費生活の安定及び向上を目的とする団体をいう。

(基本理念)

第3条 消費者施策の推進は、区民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な消費生活を営むことができる環境が確保される中で、次に掲げる事項を尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため、自主的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。

(1) 消費者の生命、身体及び財産が商品及びサービスにより侵害されず、安全が確保されること。

(2) 商品及びサービスについて、消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること。

(3) 消費者に対する必要な情報の提供及び教育の機会の提供が確保されること。

(4) 消費者に被害が生じた場合における公正かつ速やかな救済の方法が確保されること。

(5) 消費者の意見が消費者施策に反映されること。

(環境への負荷等に対する配慮)

第4条 消費者施策の推進は、消費生活における環境への負荷及び高度情報通信社会の進展への的確な対応に配慮して行われなければならない。

(区の責務)

第5条 区は、消費者施策を通じて、消費者の権利を尊重し、区民の消費生活の安定及び向上を確保するものとする。

2 区は、区民の参加と協力の下に、消費者施策を実施するよう努めなければならない。

3 区は、消費者施策に区民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。

4 区は、区民が消費生活の安定及び向上を図るため自主的に行う調査、研究、学習等の活動に対して、必要な援助及び協力を行うよう努めなければならない。

(国等との相互協力)

第6条 区は、消費者施策を実施するに当たり、必要に応じ、国、東京都、他の地方公共団体その他の関係機関に対して、情報の提供、調査の実施その他の協力を求めなければならない。

2 区は、国、東京都又は他の地方公共団体が実施する消費者施策について、情報の提供、調査の実施その他の協力を求められたときは、これに応ずるよう努めなければならない。

(国等に対する措置要求等)

第7条 葛飾区長(以下「区長」という。)は、前条第1項に定めるもののほか、区民の消費生活の安定及び向上を確保するため必要があると認めるときは、国、東京都、他の地方公共団体その他の関係機関に対し、意見を述べ、必要な措置を講ずるよう求めなければならない。

(事業者の責務)

第8条 事業者は、商品又はサービスの供給その他の事業活動を行うに当たり、次の事項に配慮し、必要な措置を講ずるよう努めるとともに、区が実施する消費者施策に協力するものとする。

(1) 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。

(2) 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。

(3) 消費者からの苦情に対し、適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備を図るとともに、当該苦情に適切に対応すること。

(4) 環境への負荷に配慮すること。

(消費者の役割)

第9条 消費者は、自主的に消費生活に関する知識を習得し、主体的に行動するよう努めるとともに、環境への負荷及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めるものとする。

(消費者団体の役割)

第10条 消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明を行うよう努めるとともに、消費者に対する啓発及び教育並びに消費者被害の防止及び救済のための活動をするよう努めるものとする。

第2章 消費者への支援

(情報の収集及び提供)

第11条 区長は、区民の消費生活の安定及び向上を確保するために、消費生活に関する必要な情報を収集するとともに、区民に対しその情報を提供するものとする。

(成年後見制度の活用等)

第12条 区長は、判断能力の不十分な高齢者その他の支援を要する者の生命、身体及び財産を消費者被害から保護するため、成年後見制度の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。

(消費者教育の推進)

第13条 区長は、消費者が消費生活を営む上で、必要な知識及び判断力を習得し、主体的に行動し、並びにその行動が経済社会及び環境に及ぼす影響についての理解を深めるため、消費者に対する教育に係る施策を推進するものとする。

(消費者団体の育成及び支援)

第14条 区長は、消費者団体の育成に努めるとともに、消費者団体が行う消費生活に係る活動について、必要な支援を行うよう努めるものとする。

第3章 消費者被害の防止

(不適正な取引行為の禁止)

第15条 事業者は、消費者と取引を行うに当たり、次に掲げる不適正な取引行為を行わないものとする。

(1) 消費者を訪問し又は電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器若しくは情報処理の用に供する機器を利用して広告宣伝等を行うことにより、消費者の意に反して、又は消費者にとって不適当な契約と認められるにもかかわらず若しくは消費者の判断力不足に乗じることにより、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

(2) 法令等に定める書面(当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。)を消費者に交付する義務、広告における表示義務その他事業者が消費者に情報を提供する義務に違反して、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

(3) 消費者に対し、販売の意図を隠し、商品若しくはサービスの品質、安全性、内容、取引条件、取引の仕組み等に関する重要な情報であって、事業者が保有し、若しくは保有し得るものを提供せず、若しくは誤信を招く情報を提供し、又は将来における不確実な事項について断定的判断を提供して、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

(4) 消費者を威迫して困惑させ、又は迷惑を覚えさせるような方法で、若しくは消費者を心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態に陥らせ、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

(5) 取引における信義誠実の原則に反し、消費者に不当な不利益をもたらすこととなる内容の契約を締結させること。

(6) 消費者又はその関係人を欺き、威迫して困惑させる等不当な手段を用いて、消費者又はその関係人に契約(契約の成立又はその内容について当事者間で争いのあるものを含む。)に基づく債務の履行を迫り、又は当該債務の履行をさせること。

(7) 契約若しくは法律の規定に基づく債務の完全な履行がない旨の消費者からの苦情に対し、適切な処理をせず、履行を不当に拒否し、若しくは遅延させ、又は継続的取引において、正当な理由なく取引条件を一方的に変更し、若しくは消費者への事前の通知をすることなく履行を中止すること。

(8) 消費者の正当な根拠に基づく契約の申込みの撤回、契約の解除若しくは取消しの申出若しくは契約の無効の主張に際し、これらを妨げて、契約の成立若しくは存続を強要し、又は契約の申込みの撤回、契約の解除若しくは取消し若しくは契約の無効の主張が有効に行われたにもかかわらず、これらによって生じた債務の履行を不当に拒否し、又は遅延させること。

(9) 商品若しくはサービスを販売する事業者又は取次店等実質的な販売行為を行うものからの商品又はサービスの購入を条件又は原因として信用の供与をする契約若しくは保証を受託する契約(以下この号において「与信契約等」という。)について、消費者の利益を不当に害することが明白であるにもかかわらず、その締結を勧誘し、若しくは締結させ、又は消費者の利益を不当に害する方法で与信契約等に基づく債務の履行を迫り、若しくは債務の履行をさせること。

(基準の設定及び告示)

第16条 区長は、葛飾区消費者被害救済委員会の意見を聴いて、前条各号に該当する不適正な取引行為の基準を定めることができる。

2 区長は、前項の規定により不適正な取引行為の基準を定めたときは、これを告示しなければならない。

第4章 消費者被害の救済

(区長に対する申出)

第17条 区民は、この条例の定めに違反する事業者の事業活動により、又はこの条例に定める措置が講じられていないため、消費者の権利が侵害されている疑いがあるときは、区長に対しその旨を申し出て、必要な措置を講ずるよう求めることができる。

2 区長は、前項の規定による申出があったときは必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときはこの条例に基づく措置その他必要な措置を講ずるものとする。

3 区長は、区民の消費生活の安定及び向上を確保するため必要があると認めるときは、第1項の規定による申出の内容並びにその処理の経過及び結果を明らかにするものとする。

(被害からの救済のための助言等)

第18条 区長は、消費者から事業者の事業活動により消費生活上の被害を受けた旨の申出があったときは、当該申出に係る被害からの速やかな救済のために必要な助言、仲介によるあっせんその他の必要な措置を講ずるものとする。

2 区長は、前項の措置を講ずるため必要があると認めるときは、当該被害に係る事業者その他の利害関係人に対し、資料の提出、報告又は説明の要求その他必要な調査を行うことができる。

(葛飾区消費者被害救済委員会)

第19条 前条第1項に規定する申出のうち、区長による助言、仲介によるあっせんその他の必要な措置によっては当該消費者の救済が図られる見込みがなく、かつ、区民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると区長が認めるものについて、当該申出の公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う区長の附属機関として、葛飾区消費者被害救済委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、必要があると認めるときは、当事者、関係人等の出席及び資料の提出の要求その他当該申出の解決に必要な調査を行うことができる。

3 委員会は、あっせん又は調停が成立する見込みがないと認めるときは、当該あっせん又は調停を打ち切ることができる。

4 委員会の委員(以下この条において「委員」という。)は、8人以内とし、人格が高潔で社会的信望が厚く、消費者施策の推進に関し優れた識見を有する者のうちから区長が任命する。

5 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 区長は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、その委員を解任することができる。

7 委員は、前項の規定による場合を除いては、その意に反して解任されることがない。

8 委員会の会議は、非公開とする。ただし、特別の理由があるときは、この限りでない。

9 委員は、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

10 第2項から前項までに定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、葛飾区規則(以下「規則」という。)で定める。

(公表)

第20条 区長は、前条第3項の規定によりあっせん若しくは調停が打ち切られたとき又はあっせん若しくは調停に係る申出が解決したときは、当該あっせん又は調停に係る審議の経過及び結果その他必要な事項を公表することができる。

(消費者訴訟の援助)

第21条 区長は、事業者の事業活動により消費生活上の被害を受けた消費者(以下この条において「被害者」という。)が、事業者を相手に訴訟を提起する場合又は事業者に訴訟を提起された場合で、次に掲げる要件(区民の消費生活に特に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると区長が認めるときは、第1号に掲げる要件は除く。)を満たすときは、委員会の意見を聴いて、当該被害者に対し、当該訴訟に係る経費(以下「訴訟資金」という。)の貸付け、当該訴訟を維持するために必要な資料の提供その他訴訟活動に必要な援助を行うことができる。

(1) 当該訴訟資金が被害額を超え、又は超えるおそれがあるため、自ら訴訟により被害の救済を求めることが困難なこと。

(2) 同一又は同種の原因による被害者が多数生じ、又は生ずるおそれがあること。

(3) 当該被害に係る申出が委員会のあっせん又は調停に付されていること。

(貸付けの範囲及び額)

第22条 訴訟資金の貸付けの範囲は、当該訴訟の遂行に要する裁判手続費用、弁護士費用その他訴訟に要する費用及び権利の保全に要する費用並びに強制執行に要する費用(第26条において「訴訟等の費用」という。)とし、その額は、規則で定める。

(貸付けの申込み)

第23条 訴訟資金の貸付けを受けようとする者は、規則で定めるところにより、区長に申し込まなければならない。

(貸付けの決定)

第24条 区長は、前条の規定により申込みを受けたときは、委員会の意見を聴いて、訴訟資金の貸付けの適否及び範囲を決定するものとする。

(貸付利率及び償還期限)

第25条 前条の規定により決定された訴訟資金の貸付金(次条において「貸付金」という。)は、無利子とし、その償還期限は、規則で定める。

(返還債務の免除)

第26条 区長は、訴訟資金の貸付けを受けた者が訴訟等の費用を償うことができないときその他やむを得ない理由により貸付金を償還することができないと認めるときは、貸付金の返還の債務の全部又は一部の償還を免除することができる。

第5章 葛飾区消費生活対策審議会

(葛飾区消費生活対策審議会)

第27条 消費者施策を推進するため、区長の附属機関として、葛飾区消費生活対策審議会(以下この条において「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、区長の諮問に応じ、消費者施策に関する重要な事項について審議し、答申する。

3 審議会は、区長の求めに応じ、消費者施策に関する事項の進ちよく状況について、意見を述べることができる。

4 審議会は、審議のため必要があると認めるときは、関係機関の職員その他の関係人の出席を求め、必要な資料を提出させ、意見を聴き、又は説明を求めることができる。

5 審議会は、区長が任命する委員8人以内をもって組織する。

6 審議会の委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

7 審議会の会議は、公開とする。ただし、特別の理由があるときは、この限りでない。

8 第2項から前項までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第6章 雑則

(委任)

第28条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成20年4月1日から施行する。ただし、第3章(第16条の規定に限る。)第4章(第17条及び第18条の規定を除く。)及び第5章の規定は、規則で定める日から施行する。

(平成20年規則第48号で平成20年5月15日から施行)

葛飾区消費生活条例

平成19年12月17日 条例第38号

(平成20年5月15日施行)

体系情報
第9編 民/第2章 消費生活
沿革情報
平成19年12月17日 条例第38号