葛飾区史

第5章 暮らしの移り変わり


第3節 都市近郊の農村

■都市近郊農村の娯楽 :四季の娯楽【植木市】

 春になると本田木根川町の木下川薬師(浄光寺)、青戸町の延命寺、金町の半田稲荷神社などで植木市が開かれた。こうした機会に農家では芋や夏野菜の苗などを購入した。
 青戸町の延命寺は「疫神様」と呼ばれていて、「疫神様の縁日で買った苗ものはよく当たる(育つ)」と言われて人気があった。延命寺の大祭は青戸町の人たちにとっては神社の祭礼と並ぶ大きな楽しみの機会で、夜は江戸里神楽の松本源之助社中や足立区舎人の芝居の一座を呼んだ。こうした芝居にはムラを越えて大勢の人が見物に来た。同じように、祭りのときに広い範囲の人たちが集まった水元飯塚町の浅間神社の祭礼と対で語られていて、「疫神様の大祭が晴れれば飯塚の浅間様の祭りは雨になる」といわれた。
 木下川薬師(浄光寺)の植木市は4月8日に行われている。この日は釈迦像に甘茶をかけて家内安全と厄除けを祈願する人が大勢参拝に来る。この日、木下川薬師の近くの人たちは草餅を作る習わしがあって、重箱に詰めて親戚に持って行き、「今日は薬師様のお祭りだから遊びに来てください」とあいさつしたものであった。
 植木市も花見や潮干狩りと並ぶ春の娯楽で、この植木市が終わると苗代に種をまくというように農耕の目安ともなっていた。

延命寺の大祭(昭和20年代、青戸町〔現青戸〕)
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木下川薬師(浄光寺)の植木市(平成28〔2016〕年、 東四つ木)
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