葛飾区史

第2章 葛飾の成り立ち(古代~近世)


第1節 古代の葛飾

■古代葛飾の人々の暮らし :葛飾から貢納された品目

 古代の葛飾区域において、一般的に全国で収取される調の絁・糸・布の生産が行われていた可能性がある。また、早稲の栽培などにみられる低湿地ならではの農業も古代の葛飾では広く展開していたと考えられる。平安時代の史料である『古語拾遺』によると、下総国を含む「総国」の名前の由来は、麻の実がたくさん実ることにちなんでいる。稲と同様に水耕栽培される麻は、低湿地帯に位置する下総国の葛飾でも栽培が盛んであったと考えられる。
 また下総国は、関東地方の中では最も多くの種類の薬の原料を貢納している。これらの中で古代の葛飾から貢納されていたと考えられるのは、日当たりのよい河川敷に自生するウマノスズクサ(青木香)やカワラナデシコ(瞿麦)、オキナグサ(白頭公)、日当たりのよい海岸に自生するタカトウダイ(大戟)、海岸や河原など湿り気のある砂地を好むクコ(枸杞)、湖や池の周囲に自生するガマの花粉(蒲黄)、乾燥した海岸地帯に生育するホウキギの実(地膚子)といった薬草があげられる。

カワラナデシコの花
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